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さくひんのしゅじんこうとしんりのかげ
作品の主人公と心理の翳
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《作品の主人公と心理の翳(さくひんのしゅじんこうとしんりのかげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,505 字 · 6 頁
それぞれにちがったもの、それぞれの本来の機能のあるもの、それをそれとしての価値で何故あるとおり見ていっていけないような工合になっているのだろう。
文学の本来の言葉で語る場合にそういうひねこびた状態が伴った例は過去にもあった。過去の或る時代の文学が昔翁ありけり、という調子で語りはじめられていることを、私たちはただ外面の様式として見過していいのだろうか。
現代の作家の生活は一市民としても複雑で、過去のその頃のように、翁ありけりの生活に身をおくことは絶対に不可能である。また、そういう希望をもつものもなくて、反対に否応なく接触面はひろげられつつある。形象的にひろがりながら、文学の精神の表情は、何ものかに対して辞を低うするのが常識であるかのようになっているとすればその間の心理は一ひねり二ひねりしたものともならざるを得ない。
現代文学が、文芸思潮で動くことをやめ、心理で動いてゆくようになってから既に数年経った。その心理のうねりの間に文学の胚種は護られているのだけれど、文学の壮健な生い立ちのためには文学を導く心理そのものを時々はきびしく吟味してみるのがすべての作家の責任でもあると思う。