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さっかてきしそう
作家的思想
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《作家的思想(さっかてきしそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,717 字 · 14 頁
然るに、建設の文学に於て、一応、「わたくし」的創作技法が排斥されるのは、何故であろうか。結論に飛べば、「わたくし」的技法などよりも、直接に思想に頼れと云われる。思想で事象を選択し整理して、直截に叙述せよと云われる。更に卒直に、「わたくし」の代りに思想を持って来いというのである。――茲に、何か忘れられてるものがある。思想が創作上にそういう風に使用され得るものでないのは、云うまでもないことであるが、問題は創作技法にあるのでなくて、更に先方にある。
ドストエーフスキー的世界に於て、ああいう性質の事柄を持ちこたえるのが容易でないのは、創作技法の上ばかりでなく、更に多く、当の作者の体力のことになる。精神と肉体と両方をこめた体力である。
作者と作品との関係は、常識的に考えられる建築物との関係とは異る。建築家は、大地の上に先ず基礎工事を施し、その上に石を据え煉瓦を積み、柱を立て屋根を覆い、そうした建築工程を側に立って見守っているものと、常識的には考えられる。だが、真の建築家は恐らくそうではあるまい。文学上の作者は更にそうではない。それぞれの円柱を、それぞれの硝子板を、それぞれの屋根瓦を、建築全体を自分の双肩に荷っている。