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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁

青空文庫

平六と同じような理由で、敵には臆病な彼も、今までに何度、致死期の仲間の者をその鉾の先で、とどめを刺したかわからない。それも多くは、人を殺すという、ただそれだけの興味から、あるいは自分の勇気を人にも自分にも示そうとする、ただそれだけの目的から、進んでこの無残なしわざをあえてした。それが今は――

と、たれか、彼の苦しみも知らないように、灯の陰で一人、鼻歌をうたう者がある。

いたち笛ふき

猿かなず

いなごまろは拍子うつ

きりぎりす

ぴしゃりと、蚊をたたく音が、それに次いで聞こえる。中には「ほう、やれ」と拍子をとったものもあった。二三人が、肩をゆすったけはいで、息のつまったような笑い声を立てる。――猪熊の爺は、総身をわなわなふるわせながら、まだ生きているという事実を確かめたいために、重いを開いて、じっとともし火の光を見た。灯は、その炎のまわりに無数の輪をかけながら、執拗い夜に攻められて、心細い光を放っている。と、小さな黄金虫が一匹ぶうんと音を立てて、飛んで来て、その光の輪にはいったかと思うとたちまち羽根を焼かれて、下へ落ちた。青臭いにおいが、ひとしきり鼻を打つ。