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ちゅうとう

偸盗

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《偸盗(ちゅうとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,934 字 · 97 頁

青空文庫

」

「やれやれ、頓生菩提、頓生菩提。」

「次郎さんも、見えないぞ。」

「これも事によると、同じくじゃ。」

太郎も死んだ。おばばも、もう生きてはいない。自分も、すぐに死ぬであろう。死ぬ。死ぬとは、なんだ。なんにしても、自分は死にたくない。が、死ぬ。虫のように、なんの造作もなく死んでしまう。――こんな取りとめのない考えが、暗の中に鳴いている藪蚊のように、四方八方から、意地悪く心を刺して来る。猪熊の爺は、形のない、気味の悪い「死」が、しんぼうづよく、丹塗りの柱の向こうに、じっと自分の息をうかがっているのを感じた。残酷に、しかもまた落ち着いて、自分の苦痛をながめているのを感じた。そうして、それが少しずつ居ざりながら、消えてゆく月の光のように、次第にまくらもとへすりよって来るのを感じた。なんにしても、自分は死にたくない。――

夜はたれとか寝む

常陸の介と寝む

寝たる肌もよし

男山の峰のもみじ葉

さぞ名はたつや

また、鼻歌の声が、油しめ木の音のような呻吟の声と一つになった。とたれか、猪熊の爺の枕もとで、つばをはきながら、こう言ったものがある。

「阿濃のあほうが見えぬの。」

「なるほど、そうじゃ。