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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

」

どさり、と、重く、畳に両手をついて、横を向くようなおじぎをした。

二

上野介は、無意識に、冷えた茶をふくんだのに気がついた。吐き出したかったが、吐き出すかわりに、ごくりと飲み下して眉根を寄せた。

「何だ、これは――何だと訊いておるに、なぜ返事をせんか。」

すこし離れて、公用人の左右田孫三郎が、頸すじを撫でながら、主人を見上げた。

「御覧のとおり、扇箱でございます。」

「扇箱は、見てわかっておる。その扇箱がどうしたというのだ。」

鍛冶橋内の吉良の邸で、不機嫌な顔を据えた上野介の前に、扇箱が一つ、ちょこなんと置いてあった。

年玉などに使う、八丈を貼った一本入れの、粗末なものだった。空箱で、竹串がはいっていて振るとがらがら音がした。高価く踏んで、四十五文か、精ぜい五十文の物だった。

「立花出雲は、添役じゃぞ。」吉良は、漆のように黒く光る眼を、いそがしく瞬いた。「孫三、出雲から、何がまいったとやらいうたのう――。」

「は。天瓜冬の砂糖漬、鯛一折、その他国産色いろ――。」

「砂糖漬には――これだけとか申したな?」

ちょっと逡巡ったのち、上野は、人さし指を一本立てて見せた。