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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

「何じゃい。」

「お席が違いますぞ。」

「はあ?」

吉良は、面白くなってきた。

「お席が違う。」急調子に、「お席が違うというに。これ、お席――。」

「なに? 何をぶつぶついわれおる。」

美濃守は、大きな肩を丘のように据えて、動こうともしなかった。

「本座にお直りなさい、本座に!」

「本座? 本座とはどこですかな。」

「しっ! さような大声を――早く、本座へ!」

「わからぬことをいうなっ。本座とはどこだ。」

「何を申す!」吉良が、きっとなった。「急場になって、本座はどこだなどと訊いておるどころではない! ええいっ! 本座へ控えるのだ、本座へ。」

つと起った美濃守が、小腰をかがめて、すり足に、見事に、お抽斗へ直るのを見ると、吉良は、かっとした。

美濃守は、はじめから知っていて、自分を揶揄していたのであったことに気がついた。

翻弄されぬいていた――眼のまえに、何か赤いものが躍り立つように、吉良は、感じた。

四

「関東の武家、名は何といわるる?」

正親町中納言が、ものずきに、岡部美濃守をふり返って、訊いた。

饗応役は、勅使にしたがって、松の廊下まで来かかっていた。