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げんろくじゅうさんねん

元禄十三年

林 不忘

線上閱讀林 不忘《元禄十三年(げんろくじゅうさんねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,586 字 · 42 頁

青空文庫

吉良は、その、天瓜冬の砂糖漬に隠された現金の進物を、賄賂とは解釈していなかった。自分に教えを受けるについての、当然の謝礼――挨拶、と周囲から思わせられてきていた。

添役立花出雲守は、奥州下手渡三万石で、それが百両もはずんだのだから、本役で五万三千石の岡部家からは、まず、五百両は動かないところ、と踏んでいた矢さきに、この扇箱ひとつだった。

「侮辱だ。立派な挑戦じゃ――。」

また独言が出た。

「うむ。おれに訊かんでも、饗応方が勤まるという意じゃろう。面白い。勤めてみるがよい。物のたかではないぞ。この無礼な仕打ち――はじめてじゃ。」

「殿様。」平茂が、前の扇箱に眼をつけて、手を伸ばした。「酔興なお品がこれに。松飾がとれますと、扇箱のお払いものはございませんか、って、裏ぐちから顔を出しますな。あれは、買いあつめて、箱屋へ返して、来新春また――。」

吉良は、黙って起った。扇箱を、うしろの違い棚へ置いて、褥へ返った。

「よいのがあるとか申したのう。」

「現れました。」

いつもの吉良を見て、平茂は、羽織の裾をひろげながら、膝を進め出した。

「あちこち口を掛けておきましたところが、これも縁でございますな。