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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

「や!」

と叫ぶと檻の戸をムズと両手でひっ掴んだ。

江戸市中狂乱の巻

一

浅草奥山の見世物小屋から、葉之助は邸へ帰って来た。

意外の人が待っていた。

蘭医天野北山と弟子の前田一学とが客間に控えていたのであった。

「おお、これは北山先生」

葉之助は喜んで一礼した。

「前田氏にもよう見えられた」

「葉之助殿、出て来ましたよ」北山はいつになく性急に、「さて早速申し上げる、先日はお手紙と不思議の白粉、よくお送りくだされた。まずもってお礼申し上げる。しかるにお送りの該白粉、とんと性質が解らなくてな」

「ははあ、さようでございますか」葉之助は案外だというように、「先生ほどの大医にも、お解りにならないとは不思議千万」

「いや私もガッカリした。そうしてひどく悲観した。と云ってどうもうっちゃっては置けない。で、私は一学を連れ、倉皇として出て来たのだ。……そこで私は一学を玄卿の邸へ住み込ませようと思う」

「ははあ、それでは先生には、大槻玄卿が怪しいと、こう覚し召し遊ばすので?」

「さよう、怪しく思われてな」北山はしばらく打ち案じたが、「卒直に云うとまずこうだ。