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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁

青空文庫

と、意外にも戸があいた。とたんに彼は転がり落ちた。転がったのが天佑であった。戸が開くと同時に恐ろしい物が、彼を目掛けて襲いかかって来た。それを正面に受けたが最後、彼は微塵にされただろう。

一五

円錐形の巨大な石が――今日で云えば地均轆轤が、素晴らしい勢いで落下したのであった。

ドーンと戸口は締められた。後は寂然と音もしない。しかし無数の邪教徒が、四方八方から彼を取りこめ、討ち取ろう討ち取ろうとしていることは、ほとんど疑う余地はなかった。

人声のないということは、その凄さを二倍にした。立ち騒がないということは、その恐ろしさを二倍にした。

今は葉之助は途方に暮れた。

「どうしたものだ。どうしてくれよう。どこから、逃げよう。どうしたらいいのだ」

混乱せざるを得なかった。

とまれじっとしてはいられなかった。その建物を東の方へ廻った。と、建物の角へ来た。

曲がった眼前に大入道が、雲突くばかりに立っていた。

「えい!」一声斬りつけた。カーンという金の音がした。そうして刀が鍔もとから折れた。

大入道は邪神像であった。

「しまった!」と彼は思わず叫び、怨めしそうに刀を見た。