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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 160,664 字 · 323 頁
葉之助を抱えた二人の姿は、文字通り誰にも見られずに、森帯刀家の裏門から、屋敷の中へ消えてしまった。
闇ばかりが拡がっていた。習々と夜風が吹いていた。
二四
この頃江戸の真ん中では、窩人と水狐族との闘争が、凄じい勢いで行われていた。
種族と種族との争いであった。宗教と宗教との争いであった。先祖から遺伝された憎悪と憎悪とがぶつかり合った争いであった。
火事の光はここまでも届き、空が猩々緋を呈していた。家々の屋根が輝いて見えた。
幾群かに別れて切り合った。槍、竹槍、刀、棒、いろいろの討ち物が閃めいた。悲鳴や怒号が反響した。
一群がパタパタと逃げ出した。他の群がそれを追っかけた。逃げた群は路地へ隠れた。他の群はそれを追い詰めた。逃げた群が盛り返して来た。路地で格闘が行われた。
数人が人家へ逃げ込もうとした。その家では戸を立てた。家人は内からその戸を抑えた。数人がそこへ追っかけて来た。そこでも切り合いが始まった。
人家の屋根へ上がる者があった。その屋根の上に敵がいた。取っ組んだまま転がり落ちた。
一人の武士が竹槍で突かれた。それは迷信者の一人であった。