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しょとうのにっきから
初冬の日記から
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《初冬の日記から(しょとうのにっきから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,930 字 · 20 頁
世の中が真暗くなったような錯覚を起こさせるのがジャーナリズムの狙い所ではあろうが、考えてみるとどこの世界にでも与太者のユーモレスクのない世界はないであろう。そんなものにばかり気を取られていると自分の飯に蠅がたかる。こんな新聞記事をよむ暇があったら念仏でもするかエスキモー語の文法でも勉強した方がいい。
火鉢のそばに寝ていた猫が起きあがって一度垂直に伸び上がってぶるぶると身振いをする。それから前脚を一本ずつずっと前へ伸ばして頭を低く仰向いて大きな欠伸をして、尻尾をSの字に曲げてから全身を前脚の方へ移動しのめらせてそうして後脚を後方へのばした。これからそろそろ庭へ出て睡蓮の池の水をのんで、そうして彼の仕事の町内めぐりにとりかかるのであろう。自分はこれから寝て、明日はまた、次に来る来年の「試験」の準備の道程に覚束ない分厘の歩みを進めるのである。(昭和九年一月『中央公論』)