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はつこい

初恋

矢崎 嵯峨の舎

線上閱讀矢崎 嵯峨の舎《初恋(はつこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,226 字 · 39 頁

青空文庫

「秀さんいい物を拵らえて上げましょう」

「どうぞ」

娘は幾枚となく半紙をとり出して、

「そらようございますか、これが何になるとお思いなさる,これがね」ゆッたりした調子で話し始めた。「――これは、そらね、これをこう折ッて、ここをこうすると、そうら、一つの鶴が出来ますよ、そら今出来ますよ、そうら出来た」

娘は鶴を折るとそれから舟、香箱、菊皿、三方などを折ッてくれた。自分は娘が下を向いて折物に気を取られている間、その雪のような白い頸、その艶々とした緑の黒髪、その細い、愛らしい、奇麗な指、その美しい花のような姿に見とれて、その袖のうつり香に撲たれて、何もかも忘れてしまい、ただもウうッとりとして、嬉しさの余り手を叩きたいほどであッた。

「お姉さま、折方を教えて下さいな」

それから自分は折方を習ッて、二三度試して見たが出来なかッたので、娘は「ほんとうにこの子は不器用な人だ」と笑いながら、いやというほど自分の手を打ッた,痛かッた、痛さが手の筋へ染み渡ッた,が痛さと一しょに嬉しさも身に染み渡ッた,嬉しいから痛いのか、痛いから嬉しいのか? 恐らく痛いから嬉しいので……まアどうでもいいとして、痛さが消えぬように打たれたところをそっと撫でた。