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はつこい
初恋
矢崎 嵯峨の舎
線上閱讀矢崎 嵯峨の舎《初恋(はつこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,226 字 · 39 頁
自分は中の口から奥へはいッてあたりの様子に気をつけて見たが客来の様子はまだなかッた,さてはまだなのかと稽古着のままで姉の室へ往ッて、どうしたのだろうと噂をしていた。しばらくするとばたばたばたという足音がして部屋の外から下女の声で、
「お嬢さま、お嬢さま! お客さまが、江戸の」
自分はいきなり飛び出そうとした,「静かに!」姉に言われてそうだッけと、静かに玄関の方へ往ッてそしてお雪という娘を見た。
この時娘は、叔父の後に続いて伴の女中をつれてしとやかに玄関を上ッて来た娘は、なるほど、母の賞めた通り誠に美しい娘だ,背はすらりと高く、色はくッきりと白く、目はぱッちりと清しく、ほんとうの美人だ。黛を施し、紅粉を用い、盛んに粧いを凝らして後、始めて美人と見られるのはそれはほんとうの美人ではない、飾らず装わず天真のままで、それで美しいのが真の美人だ。この時の娘の身装は旅姿のままで、清楚とした装で飾りけの気もなかッたが、天然の麗質はあたりを払ッて自然と人を照すばかりであった。それにどんなに容貌が美しくても、気象が無下に卑しい時は、どうも風采のないものであるが、娘は見るからがその風采の中に温良貞淑の風を存していて、どことなく気高く、いかなる高貴の姫君というとも恥かしからぬ風であッた。