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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

置きくらいに母と兄とに交る/″\手紙を遣った。

けれども今、此処に打明けようと思うようなことは、母や兄には話されない。誰れにも話すことが出来ない。唯せめてお前にだけは聞いて貰いたい。――私は最後の半歳ほどは正直お前を恨んでいる。けれどもそれまでの私の仕打に就いては随分自分が好くなかった、ということを、十分に自身でも承知している。だから今話すことを聞いてくれたなら、お前の胸も幾許か晴れよう。また私は、お前にそれを心のありったけ話し尽したならば、私の此の胸も透くだろうと思う、そうでもしなければ私は本当に気でも狂れるかも知れない。出来るならば、手紙でなく、お前に直に会って話したい。けれどもそれは出来ないことだ。それゆえ斯うして手紙を書いて送る。

お前は大方忘れたろうが、私はよく覚えている。あれは去年の八月の末――二百十日の朝であった。お前は、

「もう話の着いているのに、あなたが、そう何時までも、のんべんぐらりと、ずる/\にしていては、皆に、私が矢張しあなたに未練があって、一緒にずる/\になっているように思われるのが辛い。少しは、あなただって人の迷惑ということも考えて下さい。