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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁

青空文庫

毎年も唯そわ/\と、心ばかり急がしそうにしている間に経って行って了う。分けて此の秋くらい、斯うして斯様なに寂しい思いのするのは、初めて覚えることだ。何よりも一つは年齢の所為かも知れぬ。白髪さえ頻りに眼に付いて来た。加之段々、予期していたことが、実際とは違って来るのに、気が付くに連れて、世の中の事物が、何も彼も大抵興が醒めたような心持がする。――昨夕のお宮が丁度それだ。あゝいう境遇にいる女性だから、何うせ清浄なものであろう筈も無いのだが、何につけ事物を善く美しゅう、真個のように思い込み勝ちな自分は、あのお宮が最初からそう思われてならなかった。すると昨夕から今朝にかけて美しいお宮が普通な淫売になって了った。口の利きようからして次第に粗末な口を利いた。自分の思っていたお宮が今更に懐かしい――。が、あのお宮は真実に去って了うか知らん? ――自分は何うも夢を真実と思い込む性癖がある。それをお雪は屡※(二の字点、1-2-22)言って、「あなたは空想家だ。小栗風葉の書いた欽哉にそっくりだ。」と、戯談うように「欽哉々々。」と言っては、「そんな目算も無いことばかり考えていないで、もっと手近なことを、さっ/\と為さいな!」