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わかれたるつまにおくるてがみ
別れたる妻に送る手紙
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《別れたる妻に送る手紙(わかれたるつまにおくるてがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,985 字 · 103 頁
古ぼけた二階建の棟割り長屋で、狭い間口の硝子戸をぴったり締め切って、店前に、言い訳のように、数えられるほど「敷島」だの「大和」だのを並べて、他に半紙とか、状袋のようなものを少しばかり置いている。ぐっと差し出した軒灯に、通りすがりにも、よく眼に付くように、向って行く方に向けて赤く大きな煙草の葉を印に描いている。「斯ういう処にいて働ぎに出るのかなあ!」と、私は、穢いような、浅間しいような気がして、暫時戸外に立ったまゝ静と内の様子を見ていた。
「御免!」
と言って、私は出て来た女に、身を隠すようにして、低声で、「私、雪岡ですが、宮ちゃんいますか。」と、言いながら、愛想に「敷島」を一つ買った。「あゝ、そうですか。じゃ一寸お待ちなさい!」と、次の間に入って行ったが、また出て来て、「宮ちゃん、其方の戸外の方から行きますから。」と、密々と言う。
私は何処から出て来るのだろう? と思って、戸外に突立っていると、直ぐ壁隣の洋食屋の先きの、廂合いのような薄闇りの中から、ふいと、真白に塗った顔を出して、お宮が、
「ほゝ、あはゝゝゝ。……雪岡さん?」と懐かしそうに言う。
変な処から出て来たと思いながら、「おや! 其様な処から!」