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とねがわのあゆ

利根川の鮎

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《利根川の鮎(とねがわのあゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,875 字 · 10 頁

青空文庫

遡ってきたのであろうと思う。

なかんずく鮎と鱒が数多かった。盛夏の候になっても、私の村の地先で釣れる鮎は、驚くほど大きくは育たない。七寸五分、三十匁ほどが最大であった。長さ一尺、百匁以上に育つのは私の村から上流五里、渋川町地先からさらに上流の激湍であって、下流の釣り人は渋川町の方まで遠征したのである。

鱒は、素晴らしく大きい。

この頃の日本へは、亜米利加系の虹鱒や河鱒、北海道から姫鱒などが移入されて繁殖しているが、その頃の利根川へは、古来東日本の河川に遡ってくる日本鱒である。もっとも群馬県庁の水産係が明治の初年に、琵琶湖の鱒を移植したことがあるけれど、これは如何なる理由によるものか、繁殖が極めて少なく、まれに釣れるばかりである。利根川の日本鱒は、銚子の利根河口から三月中旬には、鮎と共に海の水と別れて、淡水へ遡り込むのであるらしいのである。

鮭は、淡水へ入ると餌を口にしないけれど、鱒は盛んに餌を食う。その狙う餌は、主として若鮎の群れである。なにしろ、小さくて五、六百匁、大きいのは一貫七、八百匁もあるのであるから、随分若鮎の数を食うのであろう。であるから、必ず流れを遡る若鮎の群れには大きな鱒がつきまとい、瀬際の揉み合わせに鱒が跳躍するところには必ず若鮎の大群がいた。