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ぜんしょう

前哨

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《前哨(ぜんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,857 字 · 18 頁

青空文庫

黄色い鈍い太陽は、遠い空からさしていた。

屋根の上に、敵兵の接近に対する見張り台があった。その屋根にあがった、一等兵の浜田も、何か悪戯がしてみたい衝動にかられていた。昼すぎだった。

「おい、うめえ野郎が、あしこの沼のところでノコ/\やって居るぞ。」

と、彼は、下で、ぶら/\して居る連中に云った。

「何だ?」

下の兵士たちは、屋根から向うを眺める浜田の眼尻がさがって、助平たらしくなっているのを見上げた。

「何だ? チャンピーか?」

彼等が最も渇望しているのは女である。

「ピーじゃねえ。豚だ。」

「何? 豚? 豚?――うむ、豚でもいゝ、よし来た。」

お菜は、ふのような乾物類ばかりで、たまにあてがわれる肉類は、罐詰の肉ときている彼等は、不潔なキタない豚からまッさきにクン/\した生肉の匂いと、味わいを想像した。そして、すぐ、愉快な遊びを計画した。

五分間も経った頃、六七名の兵士たちは、銃をかついで、茫漠たる曠野を沼地にむかって進んでいた。豚肉の匂いの想像は、もう、彼等の食慾を刺戟していた。それ程、彼等は慾望の満されぬ生活をつゞけているのだ。

沼地から少しばかり距った、枯れ草の上で彼等は止った。