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ぜんきてんまやけ

前記天満焼

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《前記天満焼(ぜんきてんまやけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 48,568 字 · 98 頁

青空文庫

……どれ妾は帰りましょう。気味のよくないお屋敷などで、気味の悪い旦那様を相手にし、いつ迄お酒盛りをしたところで、面白くも可笑しくもございません」

「待てよ」とはじめて鮫島大学は、チラリと凄味を現わしたが、

「帰しはしないよ、遊んで行け。屋敷が不気味であろうとも、この俺が不気味であろうとも、それに怖気を揮うような、初心なお前ではないはずだ」

ここでニタリと笑ったが、干した盃を突き出した。

「まず一杯、飲むがいい」

「はい」と云うと穏しく、扇女は盃を手で受けたが、

「酔わせてグタグタにして置いて……などというような厭らしい、野暮なお方でもありますまい」

「またお前にしてからが、男の前で酔っ払い、不様に姿を崩すような、あたじけない女でもないはずだ」

この時、バタバタと足音がして、隣部屋へ人が来たらしく、

「お頭!」と呼ぶ声が聞こえてきた。

「馬鹿!」と一喝した鮫島大学は、

「これこれ何だ、言葉を謹め! 客の居るのを知らないのか!」

「あッ、なるほど、これは粗相……」

恐縮したらしい声音である。

「あの、旦那様に申し上げます」

「何か用か? 用なら云え」

「少し間違いが起こりまして……」