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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁
心付を渡して草履を突っかけた。
「源女さんのお部屋は一番奥で」
「そうかい」と浪之助は歩いて行った。
書割だの大道具だのが積み重ねてある、黴臭い薄暗い舞台裏を通り、並んでいる部屋々々の暖簾の前を通り、一番奥の部屋の前へ立った。
長い暖簾を掲げて入った。
衣装籠に寄りかかりながら、裃をさえ取ろうともせず、源女はグッタリと坐っていた。
「お組、わしだ」と浪之助は云った。
と、源女は閉じていた眼を、さもだるそうに細目をあけたが、
「浪之助様。……存じて居りました」
そう云ってまたも眼をとじた。
衰弱していると云ってもよく、冷淡であると云ってもよい、極めて素気ない態度であった。
立ったまま坐りもせず、そういう昔の恋人の、源女の様子を眺めながら、浪之助は意外さと寂しさと、多少の怒りとを心に感じた。
3
「知っていたとは? ……何を知って?」
「桟敷にお居でなされましたことを」
眼をとじたまま云うのであった。
「では舞台で観ていたのか」
「ええ」と源女は眼をあけた。
「浪之助様がお居でになる。――そう思って見て居りました」
「ふむ」と浪之助は鼻で云った。
「ただそれだけか。え、お組」