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けんきょう

剣侠

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁

青空文庫

が、要介は意にも介さず、逸見家とは反対の方角の、これは小川村の入口にある、この村一番の旅籠屋の、小紅屋まで歩いて来た。

「お帰り」と番頭や婢達が、これも怪訝そうな顔をして、大門札を抱えた要介達を迎え、玄関へ頭を並べたのを、鷹揚に見て奥へ通った。

2

中庭を前にした離座敷――この宿一番の座敷らしい――そこの床の間へ大門札を立てかけ、それを背にして寛かに坐わり、婢の持って来た茶を喫しながら、要介は愉快そうに笑っていた。

その前に浪之助はかしこまっていたが、これは随分不安そうであった。

「先生」ととうとう浪之助は云った。

「これは一体どうしたことで?」

「…………」

愉快そうに笑っている。

「武芸指南所の門札は、商家の看板と等しなみに、その家にとりましては大切なもの、これを外されては大恥辱……」

「ということは存じて居るよ」

「はい」と浪之助はキョトンとし、

「それをご承知でその門札を……」

「さよう、わしは外して来た」

「はい」と又もキョトンとし、

「それも高名の逸見先生の……」

「鳳凰と云われる逸見氏のな」

「はい」ともう一度キョトンとし、

「それほど逸見様は高名なお方……」