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けんきょう
剣侠
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《剣侠(けんきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,961 字 · 310 頁
と一つの人影が、月光を避けて家の塀の陰を、それからそれと伝わって、この一画から遁れ出て、下谷の方へ行こうとするらしく、ぞろぞろと歩いて行くのが見えた。
ほかならぬ水品陣十郎であった。
髻が千切れてバラバラになった髪を、かき上げもせず額にかけ、庄右衛門を切った血刀を、袖の下へ隠しながら、跣足のままで歩いていた。
辻を左へ曲がった途端、
「出た――」
「やれ!」
剣光! 足音!
五人の武士が殺到して来た。
「…………」
無言でサ――ッ。
「ギャ――ッ」
「ワッ」
仆れた。
生死は知らず二人の武士は仆れ、三人の武士は一散に逃げた。
そうしてここの地点から、陣十郎の姿も消えていて、霜の下りたような月光の中に、のたうっている二人の負傷者が、地面を延びつ縮みつしていた。
中山右近次と伊丹佐重郎、その両家に挟まれた、黒い細い露路の中を、この頃陣十郎は歩いていた。
さすがの彼も疲労したらしく、時々よろめいたり立ち止まったりした。
丁字形の辻へ出た。
左右前後をうかがってから、右の方へ歩いて行った。
と、一人の夜廻りらしい男が、六尺棒をひっさげて、石材の積んである暗い陰から、鷺足をして忍び出て、陣十郎の後を追った。