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きたのふゆ

北の冬

小川 未明

線上閱讀小川 未明《北の冬(きたのふゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,166 字 · 11 頁

青空文庫

その三人は、始終俯向いていた。各自の手に一つずつ持った提燈は、宙に吊下っているように動くともなく動いた。一同は怖しいながらに息の音を凝らして見送っていると池の方向へは行かずに、広い野原を横切って、隣村の方へ過ぎて行った。冴えた月の光りは一面に原を照していたが、ひとり三人の白い衣の上には月の光りが落ちないと見えて透して見ると雪よりも更に白い影は消えるように見えなくなった。暫くして赤い提燈の姿も見えなくなった……一同は赤い提燈が見えなくなると、急に寒さが身に浸み込むのを覚えて、その後は互に口も聞かず、凍え死ぬばかりで家に逃げ戻って寝たということだ。やがて鶏が啼いて、夜が明け放れると、あたりは昨日に変らず、彼方には、枯れた並木があって、遠くに森が見える。若しや、昨夜の幽霊の足跡はついていないかと行って見ると、ほんのそれらしい跡形もなかったという。

ここまで母は真面目で語って聞せた。

私は子供心ながらにその幽霊は何物であるか知りたかったから、

「鉄砲で撃ってしまえばいいんだね。」と聞き返えした。

「アア、そうだよ。」といって母は、もはや大分薄暗くなったから室の内で眼を細くして針仕事を忙しそうにやっている。