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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《千曲川のスケッチ(ちくまがわのスケッチ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,668 字 · 164 頁
に成り済まして一寸休茶屋の内儀をまごつかせた。私が笑えば笑う程、余計に内儀は私達を「お寺さん」にして了って、仮令内幕は世俗の人と同じようでも、それも各自の身に具ったものであることなどを、半ば羨み、半ば調戯うような調子で言った。この内儀の話は、飯山から長野あたりへかけての「お寺さん」の生活の一面を語るものだ。
私は飯山行の話の中で、土地の人の信心深いことや、あの山間の小都会に二十何ヶ所の寺院のあることや、そういう旧態の保存されているところは一寸上方へでも行ったような気のする事を君に言って置いた。この古めかしい空気は、激しく変り行く「時」の潮流の中で、何時まで突き壊されずに続くものだろうか。とにかく、長い冬季を雪の中に過すような気候や地勢と相待って、一般の人の心に宗教的なところのあるのは事実のようだ。これは千曲川の下流に行って特にそう感ぜられる。
長野では、私も善光寺の大きな建物と、あの内で行われるドラマチックな儀式とを見たばかりだし、それに眺望の好い往生寺の境内を歩いて見た位のもので、実際どういう人があるのか、精しくは知らない。飯山の方では私は何となく高い心を持った一人の老僧に逢ってみた。