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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
線上閱讀島崎 藤村《千曲川のスケッチ(ちくまがわのスケッチ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,668 字 · 164 頁
隠居は、何か思い付いたように、私達の方を振返って、白い短い髭を見せた。
肥桶を担いだ男も畠の向を通った。K君はその男の方をも私に指して見せて、あの桶の底には必と葱などの盗んだのが入っている、と笑いながら言った。それから、私は髪の赤白髪な、眼の色も灰色を帯びた、酒好らしい赤ら顔の農夫にも逢った。
古城の初夏
私の同僚に理学士が居る。物理、化学なぞを受持っている。
学校の日課が終った頃、私はこの年老いた学士の教室の側を通った。戸口に立って眺めると、学士も授業を済ましたところであったが、まだ机の前に立って何か生徒等に説明していた。机の上には、大理石の屑、塩酸の壜、コップ、玻璃管などが置いてあった。蝋燭の火も燃えていた。学士は、手にしたコップをすこし傾げて見せた。炭素はその玻璃板の蓋の間から流れた。蝋燭の火は水を注ぎかけられたように消えた。
無邪気な学生等は学士の机の周囲に集って、口を開いたり、眼を円くしたりして眺めていた。微笑むもの、腕組するもの、頬杖突くもの、種々雑多の様子をしていた。そのコップの中へ鳥か鼠を入れると直に死ぬと聞いて、生徒の一人がすっくと立上った。