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なんちしんじゅう

南地心中

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《南地心中(なんちしんじゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 39,205 字 · 79 頁

青空文庫

既に袋を出ていた蛇は、二筋電のごとく光って飛んだ。

わ、と立騒ぐ群集の中へ、丸官の影は揉込まれた。一人渠のみならず、もの見高く、推掛った両側の千人は、一斉に動揺を立て、悲鳴を揚げて、泣く、叫ぶ。茶屋揚屋の軒に余って、土足の泥波を店へ哄と……津波の余残は太左衛門橋、戒橋、相生橋に溢れかかり、畳屋町、笠屋町、玉屋町を横筋に渦巻き落ちる。

見よ、見よ、鴉が蔽いかかって、人の目、頭に、嘴を鳴らすを。

お珊に詰寄る世話人は、また不思議にも、蛇が、蛇が、と遁惑うた。その数はただ二条ではない。

屋台から舞妓が一人倒に落ちた。そこに、めらめらと鎌首を立て、這いかかったためである。

それ、怪我人よ、人死よ、とそこもここも湧揚る。

お珊は、心静に多一を抱いた。

「よう、顔見せておくれやす。」

「口惜い。御寮人、」と、血を吐きながら頭を振る。

「貴方ばかり殺しはせん。これお見やす、」と忘れたように、血が涸れて、蒼白んで、早や動かし得ぬ指を離すと、刻んだように。しっかと持った、その脈を刺した手の橘の、鮮血に染まったのが、重く多一の膝に落ちた。

男はしばらく凝視めていた。

「口惜いは私こそ、……多一さん。