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らんとうばのてんにょ

卵塔場の天女

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《卵塔場の天女(らんとうばのてんにょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,251 字 · 94 頁

青空文庫

私は撲挫けば可いと思った。撲挫いて欲しかったよ。兄さん、私はね、弱い優しいおとなしい兄さんしか知っていません。――十四で亭主を持たせられた時分だって、ああ、兄さんがもう少し強かったら、乱暴だったら、悪たれだったら、と思わない事はなかったんです。――

芸事で気が強くなったんでしょうね。――

昨夜は別れてから十何年ぶりかだし、それだし、昨夜くらい、善知識とも、名僧とも、ありがたいお説教、神仏のおつげと言っては勿体ないかも知れません。夜叉、悪魔の御託でも構わない、あんな嬉しい話を聞いた事は生れてからはじめてです。だって、余計なものは肉親も駢指でしょう、(血と肉と一つに溶けるのは、可愛い恋しい人ばかりだ。)というんでしょう……」

「私は信じるよ。」

「信じますね、……確かですね――そうすりゃ、私かって、内の亭主は駢指です。」

私は舌を掉った。

「お待ち、お待ち。――それは芸の上の話だよ。うぞう、むぞうに集られると、能役者じゃいられない、謡の師匠で、出稽古に信玄袋を持って廻らなけりゃならないというんだよ。」

「舞台だけの役者だって、私は、兄さんの羽衣とかの天人の顔を見ているより、青めりんすを引撲くか、駢指の講釈を聞く方がどんなに嬉しいか知れやしない。