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さんぐうがえり

参宮がえり

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《参宮がえり(さんぐうがえり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,325 字 · 15 頁

青空文庫

女はそう云い云い忰の方を見た。忰は幾等か心が落ちついていた。

「では、姐さんにまかして、横になっておろう、大丈夫だろうか」

「大丈夫でございます、どうか寝ておってくださいませ」

「それでは横になろう」

父親は横になると忰も横になった。女はそれを見ると手燭を持って艫の間へ往った。

父親と忰は陸の方に耳を立ててみたり、ちょと顔をあげて艫の間を覗いたりした。

父親と忰の耳へ間もなく崖の上あたりでする人の話声が聞えた。

「兄さん」

舟の中から女が声をかけた。

「なんだ、まだ寝ずにおるか」

「寝ておって眼が覚めたところよ、伯父さんもいっしょ」

「いっしょとも、伯父さんがぐでんぐでんに酔ったから、肩にかけて戻ったところじゃ」

「そんなら静に舟へ乗りなさいよ」

「乗るとも、さあ伯父さん、橋板じゃよ」

橋板の上に跫音がしはじめた。と、思う間に板の軋る音がして何か大きなものが潮の中へ落ちた。それに続いて橋板の落ちる音もした。

「さあ、皆さん、起きてくださいませ、これから舟を出します」

女が艫の方で叫んだ。父親と忰は飛び起きて胴の間に突立った。

「もう心配することはありませんが、ついすると掻きあがって来るかも判りません、手が見えたら、板を剥いで、見つけしだい撲ってくださいませ」