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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《取返し物語(とりかえしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 頁

青空文庫

前がき

いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方此方見めぐるうち、両願寺と言ったか長等寺と言ったか、一つの寺に『源兵衛の髑髏』なるものがあって、説明者が殉教の因縁を語った。話そのものが既に戯曲的であったので劇にしたらと思い付いて、其後調べの序に気を付けていると、伝説として所々に出ている。此のたび機会があったのでまとめてみた。伝説には三井寺はもっと敵役になっているが、さまではと和げて置いた。

一たい歌舞伎劇の手法は、筋の運び方と台詞のリズムに、原理性の表現主義を持っていて、ものに依っては非常に便利なものである。

滅ぼしてしまうのは惜しい。此の戯曲には可なりそれを活用してみた。

時

文明十一年十一月(室町時代末期)

処

近江国琵琶湖東南岸

人

蓮如上人  浄土真宗の開祖親鸞聖人より八代目の法主にして、宗門中興の偉僧。世に言う「御文章」の筆者。六十九歳。

竹原の幸子坊  上人常随の侍僧。

堅田の源右衛門  堅田ノ浦の漁師頭。六十二歳。多少武士の血をひいて居る。

同源兵衛  源右衛門の息子。二十三歳。

おさき  源右衛門妻。五十四歳。

おくみ  孤児の女中、もと良家の娘、源兵衛の許嫁。