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こぼく
古木
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《古木(こぼく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,648 字 · 24 頁
うとうと浅い眠りに入ることが多くなりました。
体力の衰えが急に目立ってきました。それと共に、重圧めいた苦悩も静まっていったようでした。額には仄かな和らぎの色が浮んでいました。そしてそれらのすべての彼方に、或る内心の一点への想念の沈潜とでもいうべき気配が見えました。医者は訪客との面会を禁じ、絶対安静を命じていました。
椎の木の幹が全く伐り倒された日、幹夫は父の側に行って、黙って坐りました。巳之助は弱々しい微笑を浮べました。
「すっかり済んだかね。」
「済みました。」
巳之助は暫く黙っていたあとで、言いました。
「椎の木などを、へんに問題にして、少しおかしかったよ。」
「別に問題になすったわけでもありますまい。」
巳之助はそれには答えませんでした。然し、やがて、ちょっと布団の上に坐って外を眺めたいと言いだしました。幹夫と看護婦は眼を見合して、言うがままにさした方がよかろうと了解しあいました。
看護婦に援け起されて、巳之助は布団に坐りました。幹夫は縁側の硝子戸を開けました。外は静穏な日和でした。
斜陽が流れていました。庭の外れ、崖の上、一面に斜陽が流れ注いでいました。