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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《右門捕物帖(三)(うもんとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 241,558 字 · 480 頁
不意に廊下の向こうから呼びたてた声が、ハッと名人の耳を打ちました。娘です。娘です。それぞまさしく目ざした菊代と思われる、年もちょうど十八、九ごろの意外なほどにも美しい娘なのです。娘は、そこにおそるべき名人がさし控えているのも知らぬげに、ためらい、はじらいつつも顔をのぞかせると、一心不乱にけいこさいちゅうのその師範代を、恨みがましくにらめるようにして、さらに呼び立てました。
「なんというつれないおかたでござりましょうな! さきほどからわたくしが何度も何度も呼んでおりますのに、せめてご返事ぐらいしてくださってもいいではござりませぬか! けいこなぞいつでもできまする。な! もし、源之丞さま!――お聞こえになりませぬか! な! もし、源之丞さま!」
いいつつ、哀々と訴えるようににらんだその目の光!――慧眼並びない名人の目が、思いに悩み、もだえに輝く娘のその目を見のがすはずはないのです。
「ウフフ。おかしなほうへにおってきたな、あの目がなぞのかぎかい。――もしえ! ちょっと!」
さっと立ち上がりながら、すかさずにつかつかと追いかけると、源之丞と呼んだ師範代の若者が相手にしようともしないのを恨むように、おこったように、やさしくにらみにらみ奥の間へ立ち去ろうとしていた娘のあとから不意に呼びかけました。