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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《名人地獄(めいじんじごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 頁
「ははあ、いよいよおいでなすったな」
ニヤリとほくそ笑んだものである。
正直のところ平八は、海賊を待っていたのであった。そうして彼は十中八九、現われてくるものと察していた。というのは八幡丸は、船脚が遅くかこが少なく、しかも船としては老齢なのに、某大名から領地へ送る、莫大もない黄金を、無造作に積みこんでいるからで、こういう船を襲わなかったら、それこそ海賊としては新米であった。
武士の剣技精妙を極む
八幡丸のかこどもが、海賊来襲に気がついたのは、それから間もなくのことであったが、しかしその時は遅かった。賊船から下ろされた軽舟が、すでに周囲をとりまいていた。と、投げかけた縄梯子をよじ、海賊の群がなだれこんで来た。
怒号、喚声、呻吟、悲鳴、おだやかであった船中が、みるまに修羅場と一ぺんしたのは悲惨というも愚かであった。賊は大勢のそのうえに手に手に刀を抜き持っていた。勝敗の数は自ら知れた。最初はけなげに抵抗もしたが、あるいは傷つけられまたは縛られ、悉くかこたちは平げられてしまった。
船腹へ飛び込んだ海賊どもが、黄金の箱をかつぎだしたり、積み荷の行李を持ちだしたりする、不気味といえば不気味でもあり、壮快といえば壮快ともいえる、掠奪の光景が演じられたのも、それから間もなくのことであった。