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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《名人地獄(めいじんじごく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 頁
一世一代の赤格子征めだ、命限り働くがいい」
全軍粛々と動き出した。
玻璃窓の郡上平八としては、ここが名誉と不名誉との、別れ際ともいうべきであった。赤格子が殺されてしまったら、せっかくの密書が役に立たぬ。これはどうでも戦いの前に、是非赤格子に渡さなければならない。で、つと群から駈け抜けると、付けられた十人の部下も連れず、大手の門へ走っていった。自由行動を許されていたので、誰も咎める者はない。来て見れば刎ね橋が下ろされてあった。それを渡って表門にかかり、試みに押すとギーと開いた。さて構内へはいって見ると、まことに異様な建築法であった。一渡り素早く見廻したが、中央に立っている建物へ、目を付けざるを得なかった。で、彼は足音を忍ばせ、空地を横切って本邸へ走った。手に連れて扉が開き、長い廊下が眼の前を、左右にズッと延びていた。彼はちょっとの間思案したが、つと廊下へ踏み入った。そうしてすぐに左へ廻った。
この時和泉屋次郎吉は、反対側の廊下の上に、考え込んで立っていたが、誰やら人の来たらしい、軽い足音が聞こえて来たので、ハッとして耳を引っ立てた。
「いずれ屋敷の者だろう。