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わしゅうちめいだん
和州地名談
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《和州地名談(わしゅうちめいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,320 字 · 14 頁
四
今日の歴史教育は常に「昔」を押し平めて、煎餅のようにして観るようにしか教えていない。日本人の過去生活には、見霞むような奥行のあることを、考えたり感じたりする習慣はちっともない。ことに中古以来の数百年は、何の努力も喜怒哀楽もなしに、一飛びにでも抜けて来たように見られている。大和は少なくとも絶対にそうでなかったことは、人が賢いという一事からでも立証し得られる。ただいわゆる事件を起さなかったか、あるいは起しても甚だしく小さかったために、それが年代記の上に顕われていないだけである。彼等が平穏無事の間に積み上げたものは、土地とその利用状態とであるがこれは物を言わぬ。物を言うのはおそらくは地名のみだが、これが次々の先祖の足跡を遠望する唯一の目標であることを、今はまだ心付かずにいる人が多いらしいのである。
四
この資料の粗末になりやすい原因は、主として分量のあまりにも多いからであるようだが、そんなもったいない話はないと思う。地名そのものにはいっこうに時代性が表われていないから、目安が立たぬようにいう人もあるが、これも実際は注意が鈍いためで、たとえば同じ開墾の結果を示す呼び名でも、時代時代につれて用語の差の著しかったことは、土地の制度を調べた人なら皆知っている。