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よっかのあやめ
四日のあやめ
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《四日のあやめ(よっかのあやめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,200 字 · 38 頁
――そのとき主税介は城下にいなかった。彼は刀法を修業するために、日向の国の高鍋という処へいっていた。そこに隈江流という珍しい流儀があり、古法だというのを聞いてでかけたのであった。
千世の告白を聞いた重三郎は、笑いながら「そんなことはお母さまか志津に話すものだ」と云った。兄には志津という妻がい、もう二歳になる幾三郎という子もあった。だが千世は母にも嫂にも話す気にはなれなかった。兄ならわかってくれるし、味方になってくれると思った。
――だがそれは考えものだな。
千世が本気だとわかると、重三郎もまじめになって云った。
――おまえの性分は五大とは合わない、結婚しても幸福にはなれないと思う。
――わたくしの望みは幸福ではなく、あの方の妻になることですわ。
千世はこう答えた。
よくも云えたものだ、と、いま彼女は思う。若さと負け嫌いと、そうして相手が兄だったから云えたのだろう、あのとき自分は勝ったのだ。いま彼女は心の中でそう呟きながら、良人の横顔をうっとりと見まもるのであった。
主税介は茶を喫して立つと、居間へいって茣蓙をひろげた。それを慥かめてから、千世も朝食の膳に坐った。