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よつや、あかさか

四谷、赤坂

宮島 資夫

線上閱讀宮島 資夫《四谷、赤坂(よつや、あかさか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,947 字 · 18 頁

青空文庫

高力松

高力松

いかつい石垣が向い合って立っていた。子供の目には恐ろしく高く見える。石垣の上は四角く平らになっていた。昔はぶっさき袴の侍がその上に立って、四辺を睥睨したであろう。石垣に続いた土手は、ゆるい傾斜で、濠の水面まですべっていた。水は青いぬらで澱んでいた。菱の葉が浮いていた。夏は紅白の蓮の花が咲いた。土手には草が蓬々と茂っていた。が、濠端を通る人影はまばらだった。日影の尠い、白ちゃけた道が、森閑として寂しく光った。葭簀張の店もなかった。『氷やこ――り、こ――り』今は全くなくなった、呼び売の氷屋の声が、時たまあたりに響く位だ。

冬は勿論、人通りは尠くなった。街灯もなかった。月のない晩は凄いほど暗かった。ただ、見附のワキに出る煮込み吸とんの屋台の光が、漸くほっと息をつかせる位だった。

それが私の子供時分の四谷見附だったのである。荒廃してはいたが、江戸城外廓の趣は残っていた。

木村町の高力松、現在では救世軍の学校と変圧所がある、あのあたりは、昔は辻斬のあったという場所である。赤坂離宮横、喰違い見附の向うの土手には、首縊りの松という松があった。実際よく死んだらしい。