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あかげっと しなあちこち
国枝史郎歴史小説傑作選
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《国枝史郎歴史小説傑作選(あかげっと しなあちこち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,334 字 · 121 頁
大連で(七)
売れざるダンサーなのだ。
よく肥えた、ノッソリとした、大して美しくなく、猶太娘めいたところのある女だった。
これが少しも売れないのだ。いや、殆ど絶対に売れないのだ。ところが、一向困ったような様子もせず、ノンビリと両腕を卓の上へ這わせて、場内を睥睨するのだ。その様子が迚も僕には面白かったのでその女と踊ることとし、踊った。
ところが売れない筈なのだ。まるで錨なのだ。千貫目もありそうな錨なのだ。重いったらない。重いばかりなら可いが沈むんだ。僕に食い付いて、縋って下へ沈むんだ。踊れたものじゃアなかった。
あやうく僕は引っ張り込まれて海の中へ、ナーニ、ホールの床下へ沈没しそうになったものさ。
ホールが閉じられる迄踊って僕達は引きあげた。
そうして大連名物の馬車に乗って帰路に就いたが、この馬車が面白かった。と云うよりもその馬車の馭者が面白かったのだ。
僕達を誘惑しようとしたんだからね。
大連で(七)
友よ、馬車のことが出たから馬車に就いてちょっと書こう。
真っ先に云い度いことは、大連へ来たら自動車よりも馬車に乗りたまえということだ。
その馬車は、この大連をロシアが占領していた頃の名残では無いかと思われるような、あの古風な四人乗り一頭立ち――時々、二頭の馬に挽かせているのも見かけたが――の馬車なのだ。