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こうふ

坑夫

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《坑夫(こうふ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,690 字 · 283 頁

青空文庫

この景色はかように暢達して、かように明白で、今までの自分の情緒とは、まるで似つかない、景気のいいものであったが、自身の魂がおやと思って、本気にこの外界に対い出したが最後、いくら明かでも、いくら暢びりしていても、全く実世界の事実となってしまう。実世界の事実となるといかな御光でもありがた味が薄くなる。仕合せな事に、自分は自分の魂が、ある特殊の状態にいたため――明かな外界を明かなりと感受するほどの能力は持ちながら、これは実感であると自覚するほど作用が鋭くなかったため――この真直な道、この真直な軒を、事実に等しい明かな夢と見たのである。この世でなければ見る事の出来ない明瞭な程度と、これに伴う爽涼した快感をもって、他界の幻影に接したと同様の心持になったのである。自分は大きな往来の真中に立っている。その往来はあくまでも長くって、あくまでも一本筋に通っている。歩いて行けばその外まで行かれる。たしかにこの宿を通り抜ける事はできる。左右の家は触れば触る事が出来る。二階へ上れば上る事が出来る。できると云う事はちゃんと心得ていながらも、できると云う観念を全く遺失して、単に切実なる感能の印象だけを眸のなかに受けながら立っていた。