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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
線上閱讀堀 辰雄《大和路・信濃路(やまとじ・しなのじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,165 字 · 115 頁
午後、海竜王寺にて
天平時代の遺物だという転害門から、まず歩き出して、法蓮というちょっと古めかしい部落を過ぎ、僕はさもいい気もちそうに佐保路に向い出した。
此処、佐保山のほとりは、その昔、――ざっと千年もまえには、大伴氏などが多く邸宅を構え、柳の並木なども植えられて、その下を往来するハイカラな貴公子たちに心ちのいい樹蔭をつくっていたこともあったのだそうだけれど、――いまは見わたすかぎり茫々とした田圃で、その中をまっ白い道が一直線に突っ切っているっきり。秋らしい日ざしを一ぱいに浴びながら西を向いて歩いていると、背なかが熱くなってきて苦しい位で、僕は小説などをゆっくりと考えているどころではなかった。漸っと法華寺村に著いた。
村の入口からちょっと右に外れると、そこに海竜王寺という小さな廃寺がある。そこの古い四脚門の陰にはいって、思わずほっとしながら、うしろをふりかえってみると、いま自分の歩いてきたあたりを前景にして、大和平一帯が秋の収穫を前にしていかにもふさふさと稲の穂波を打たせながら拡がっている。僕はまぶしそうにそれへ目をやっていたが、それからふと自分の立っている古い門のいまにも崩れて来そうなのに気づき、ああ、この明るい温かな平野が廃都の跡なのかと、いまさらのように考え出した。