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やまとじ・しなのじ

大和路・信濃路

堀 辰雄

線上閱讀堀 辰雄《大和路・信濃路(やまとじ・しなのじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 58,165 字 · 115 頁

青空文庫

――だが、この二三年、いつ来てみても、何処か修理中であって、まだ一度もこのあたりを落ちついた気もちになって立ちもとおったことがない。

いまだにそのまわりの伝法堂などは板がこいがされているが、このまえ来たとき無慙にも解体されていた夢殿だけは、もうすっかり修理ができあがっていた。……

そこで僕はときどきその品のいい八角形をした屋根を見あげ見あげ、そこの小ぢんまりとした庭を往ったり来たりしながら、

ゆめどのはしづかなるかなものもひにこもりていまもましますがごと

義疏のふでたまたまおきてゆふかげにおりたたしけむこれのふるには

そんな「鹿鳴集」の歌などを口ずさんでは、自分の心のうちに、そういった古代びとの物静かな生活を蘇らせてみたりしていた。

僕は漸く心がしずかになってから夢殿のなかへはいり、秘仏を拝し、そこを出ると、再び板がこいの傍をとおって、いかにも虔ましげに、中宮寺の観音を拝しにいった。――

それから約三十分後には、僕は何か赫かしい目つきをしながら、村を北のほうに抜け出し、平群の山のふもと、法輪寺や法起寺のある森のほうへぶらぶらと歩き出していた。

ここいら、古くはいかるがの里と呼ばれていたあたりは、その四囲の風物にしても、又、その寺や古塔にしても、推古時代の遺物がおおいせいか、一種蒼古な気分をもっているように