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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁
駒井能登守もいなければ、神尾主膳もいない。南条力も、五十嵐甲子雄も昔のこと。お君も、米友も、ムク犬も、暫くはここの天地に生を寄せていたことがあり、女軽業のお角の一行も、ここで笛、太鼓を鳴らしたことがありました。
しかし、それはみな夢のように流れ去って、残るところの山河と、町並だけは相も変らず。兵馬の眼で人間がその昔の時よりも暢気に見えるのは、自分にさしさわりない他人ばかり残っているというせいでもあるまい。たしかに甲府の市民にとっても、その昔のような辻斬の脅威がなくなってしまったことだけでも、生命のゆとりがのびているのかも知れないと思われるほどです。
柳町の一蓮寺。その昔、お角の一行が女軽業を打ったところへ来て見ると、そこは相変らず賑やかで、甲府人の行楽のところ。
以前、お角一行の軽業のあったところには、けばけばしい芝居の興行がかかっているらしい。兵馬はその方へ進んで見ると、何かは知らないが人だかりのする絵看板。
近づいて見ると、思いきって大きな看板に、黒頭巾をかぶった黒いでたちの侍の絵姿。
兵馬は、それを見てゾッとするほど嫌な気持がしました。
このごろは、世間が殺伐だから、芝居にも、切ったり張ったりがはやるのか知ら。