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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁

青空文庫

「私だというのに、わかりませんか」

「わからないよ、声を立てて人を呼びますよ」

「いけません、いけません」

「では、早く出ておいで」

「お絹様、わたくしでございます、七兵衛ですよ」

「七兵衛さん……」

お絹はあいた口がふさがりませんでした。

「いつ来たの、お前」

「三日ほど前に参りました」

「なんとか挨拶したらよかりそうなものじゃありませんか、だしぬけに人の家へ入って来て、銭勘定なんぞをはじめて」

「でも、これが商売だから仕方がありませんね。いま明りをつけますから、お待ち下さいまし」

と言って、七兵衛が先刻の裸蝋燭へ火をつけた途端に、障子を開いたお絹が見ると、あたりはパッと金銭の小山。

「まあ――」

お絹はまずその光に打たれてしまいました。

その翌日になって、お絹から千隆寺の住職を、改めて神尾主膳に引合わせた時、おたがいに呆れ返って、

「やあ、君か」

という有様でありました。

千隆寺の住職――その名を敏外――というこの男は、姓を足立といって、本所の林町で相当の旗本の家に生れ、不良少年時代には、主膳と肩を並べて、押歩いた仲間の一人でありました。

そこで、ガラリと砕けて、お互いの打明け話になってみると、この敏外は、叔父が護国寺の僧で、それを縁故に仏道に入り、無理に坊主にさせられて今日に及んだということであります。