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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁

青空文庫

茂太郎は声をあげて助けを求めるの叫びを立てようとするのを、がんりきの百蔵が早くも、合羽の中へ抱え込んでしまって、

「おとなしくしな」

哀れむべし。清澄の茂太郎は、無頼漢の羽掻に締められて、進退の自由を失ってしまいました。せめて、口笛でも吹くだけの余裕があったならば、こういう時に、狼が来てくれたかも知れない。

しかし、がんりきの百蔵とても、この子供を、そうむごく扱うつもりでしているのでないことは、おおよその挙動でも知れる。誰かに拐されて、こんな山の中へ連れ込まれて、動きが取れないでいるのを、再び世に出してやるのだというくらいな腹はあるらしい。だから、むしろ親切でしてやるつもりが見える。

そうして、とうとうがんりきの百蔵と、清澄の茂太郎とは、どこかへ行ってしまいました。

一方、弁信法師が狂気のように騒ぎ出したのは、それから後のことであります。

弁信は、報福寺の提灯をともして、寺の門を駈け出して、

「茂ちゃあーん」

と幾度か叫び、幾度かころげましたけれども、返事とてはありません。

「茂ちゃあーん」

宮の台の、たった今まで百蔵がいた石のところまで来て、またころんで起き上った弁信は、提灯を拾い取って見ると、幸いにまだ火は消えておりませんでした。