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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 頁
「そうですか……刀には丁子の油がいいと聞きましたが、椿油でもいいのですか」
「椿の方がいいんですとさ」
といいながら、お雪は戸棚の隅から油壺に入れた椿の油を取り出して、浅吉の前に置き、
「たくさんお使いなさいまし」
「有難うございます」
お雪は再び書物の数を読んで、都合六冊ばかりの本を取揃えると、
「では、わたし、ちょっと下へ行って参りますから、一人でお待ちなすって下さい」
「お雪ちゃん」
お雪が立って下へ行こうとする袖を、引き留めるようにして浅吉が、
「お雪ちゃん、もう少しここにいて下さいな」
「でも、わたし、よい歌の先生が見つかりましたものですから、教えていただきたいと思います」
「それにしても、私は一人じゃ淋しいから、少しの間ここにいて下さいな」
「いいえ、うちの先生もそのうちに帰るでしょうから」
「お雪ちゃん……後生ですから」
浅吉は拝むようにいいましたけれども、お雪は笑って取合わず、
「浅吉さん、弱い人ね、もう少し強くならないと、鼠に引かれちまいますよ」
お雪は、新しい知識のあこがれがいっぱいで、本を抱えると、欣々として下へおりて行きました。
それを追いすがるほどの元気もなく、そのあと浅吉は、ぼんやりとして、お雪から与えられた備前焼の油壺を取り上げて、そっと香いをかいでみました。