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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 頁
追いかけて、つかまえたのは、さいぜん道庵先生が嘲笑った三人連れのお差控え候補者の中の、いちばん年かさな侍の刀の鐺です。
「すわ」
と、北国街道がドヨめきました。
「何、何事だ」
刀の鐺をつかまえられた侍はもちろん、三人ともに眼に角を立てて立ちどまりますと、くだんの悪体な馬子が、怒りを向う鉢巻の心頭より発して食ってかかり、
「見ねえ、あ、あれを、どうしてくれるんだい、やい、あの提灯をよう」
「ははあ、あれは貴様のか、急いだ故につい粗忽を致した、許せ」
年かさな侍が陳謝して過ぎ去ろうとしたのは、たしかに自分が、右の馬子とすれちがいざまに、あの提灯に触って振り落したという覚えがあるから、聞捨てならぬ悪口ではあるが、軽く詫びて通ったのが勝ちと思ったからです。
「何、何をいってやがるんだ、あれは貴様のか、急いだためついしたそそうだと……よく目をあいて拝みやがれ、あれは加賀様の御用の提灯だわやい」
かさにかかった悪態の馬子は前へ廻って、件の侍の胸倉を取ってしまいました。そこで軽井沢の全宿が顫え上りました。
道庵先生は、これは自分の頭へ提灯が降って来た以上の出来事だと思いました。