輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁
「逃げろ! 鐚」
と言って、一ふりその脇差を振り廻したところが、それがほんの糸を引いたほど、鐚の頬をかすったものですから、真甲から断ち割られでもしたもののように、鐚が後ろへひっくり返ると共に、頬を抑えて起き上り、脱兎の如く逃げ出しました。
群集の中へ殺入した神尾主膳の姿も、いつしか見えなくなって、町の巷が恐ろしい空気の動揺を残しているだけです。
「斬った!」
「斬られた!」
と、千住三輪街道は、往くさ来るさの人が眼の色を変えて騒ぐけれども、斬った当人の姿はいつしか見えず、斬られた本人は、どこへどう逃げたか行方知れず、斬った当人は相当身分のありそうな姿をしていたが、それも一目散に逃げてしまって行方がわからない。
これによって見ると、神尾主膳は一旦むらむらとして、例の病気から、前後を忘れて脇差を抜いて、通りがかりの者をひとたち斬ったには相違ないが、血を見た瞬間に自分も醒めたものらしい。酒乱の時は知らぬこと、今日は乱れるほど酒を飲んでいない。むかっとやっつけたが、血を見た瞬間、これはやり過ぎた! と覚ったものと見える。そうして自分は群集の中へ殺到するように見せて、実はその中を突抜けて、早くも身を隠してしまったのだ。