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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁
を思い出さないものはあるまいが、「一つ家」を思い出す限り、その「一つ家」の中に棲んでいるものが「鬼」でなくて何だ。
鬼は有難くないな。
とうとう、安達ヶ原へ迷いこんで、鬼の籠る一つ家へ追い込まれてしまった。
有難くねえな。
七兵衛は苦笑いをしてしまいました。いかに科学の力に乏しい七兵衛とは言いながら、いかにまた土地柄が奥州安達ヶ原とは言いながら、田村麿の昔ならいざ知らず、今の世に「鬼」なんぞが棲んでたまるか――と冷笑するくらいの聡明さを持たない七兵衛ではないが、こういう時間、こういう場合に置かれてみると、どうしてもその聡明さが取戻せない。ばかばかしいと思いながら、やっぱり、あちらに見えるあの一つ家は鬼の隠れ家だ、そうでなければこんなところに、こんなに一軒家の生活が成り立つわけのものではない。
七兵衛は、鬼の存在を、事実に於て否定しながら、想像に於て、どうしても絶滅を期することができない。
しかし、この際に於ては、鬼であろうとも、夜叉であろうとも、取って食われようとも、食われまいとも、あの一つ家を叩いてみるよりほかはない。まして自分として、鬼とも組もうというほどの力持ちではないが、なにもそう鬼だからといって、弱味ばかりを見せていていい柄ではない。