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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁

青空文庫

「ちょっとお頼み申します」

「誰だえなア」

「ええ、旅のものなんでございますが、道に迷いましてからに」

「旅の衆かエ――まあ、どちらからござらしたのし」

「ええ、西の方から参りました」

「西の方から、では、小平の方からいらしたな」

小平が西だか東だか知らないけれども、七兵衛は、この際、よけいなダメを押す必要はないと考えて、

「はい、左様でございます」

「ほんとかなあ、よくまあ、この夜中に、鬼にも喰われねえで……」

「え……」

と、七兵衛がまた聞き耳を立てました。先方のいま言った言葉の意味は、よくまあこの夜中に鬼にも喰われないで、無事にやって来たな――とこういう意味に相違ないから、七兵衛が先を打たれてしまったように感じました。鬼に喰われずにここまで来たんではない。これから鬼に対面して、喰われるか、喰うかの土壇場のつもりで来ているのだ。

七兵衛の狼狽に頓着なく、先方は早や無雑作に土間へ下りて来て、七兵衛の叩いた戸を内からあけにかかりながら言うことには、

「よく、まあ、鬼にも喰われずにござらしたのし、お前さん、岩見重太郎かのし」

「いや、どうも、おかげさまで――」

岩見重太郎呼ばわりまでされたので、七兵衛も内心いよいよ転倒恐縮せしめられていると、無雑作にガラッと戸をあけて、面を現わした主は、鬼どころではなく、人間も人間、人間の中の