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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 頁

青空文庫

岩切の宿で、ちょっとの隙を見出して、縄抜けをして逃げた、逃げた、やみくもに逃げて、或る川の渡し場へ来た。

その渡し場で、何かごたごたが起って、若い侍が一人、とっちめられている。聞いていると、どうやら無断で川破りをやって来たものらしい。

右の若い侍が、素敵に長い刀を差している。それを抜いて見せろ、見せないの一争い、とうとう居合抜きがはじまった。その時の瞬間だ、若い侍が懐ろへ道中手形を納めるその手先を、認められたのがあっちの不祥だ。あれをちょっとお借り申して置けば、これからの道中の何かのまじないにはなるだろうと、気の毒ながら、その手形をちょろまかして、こうして懐中して来ている。

それから、難なく渡しを渡って、またこうして走りつづけているうちに、この安達ヶ原へ紛れ込んだのだが、東西南北、遠近高低、すべて無茶苦茶だが、足に覚えがあるによって、ちょっとあれから、こうと、何里どちらへ走って、何里こちらへ逃げた。おおよその見当はつくにはつく。せめて一枚の絵図面でもあれば、ここでこうしてひろげて見るうちに、これからの身の振り方もきまるのだが、絵図面どころではない、命一つをやっと持ち出したようなものだ。