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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 頁

青空文庫

考える暇もないらしい。もし、少々でもその余裕があったとしたならば、彼は第一に、このことが宇津木兵馬というものにとって、いいことか、悪いことか、そのことだけでも一応は考えなければならないはずなのです。

七兵衛としては、一日も早く兵馬に本望を遂げさせて、そのあと二人を一緒にしてやる、これが一生の願いで、これまで陰に陽にそのことに力を入れて来たのですが、ここで、そういう結構が、すっかり打ちこわされてしまっていることを知った以上は、お松に対して苦言を言わなければならず、駒井に対して直諫もしなければならないところなのですが、これがすっかり消滅して、

「お松もいよいよ女になった、これで、おれも安心だ」

という安心と満足でいっぱいなのは、どうしたものでしょう。こうして七兵衛が、大安心と満足で満ちきっているところへ、天幕の外から、

「おじさん、来ているの?」

これも、うら若い女の声でありました。紛う方なき奥州の南部で、七兵衛入道がむりやりに押しつけられて来た、お喜代という村主の娘の声に相違ありません。

三十一

「お喜代坊か」

と七兵衛が言ったので、

「おじさん、一人?」